量子コンピュータが本格化したらビットコインは終わるのか。とくに10〜20年ホールド前提で買っている人ほど、この一言が頭から離れないはずです。本記事では、長期ホルダーが量子リスクをどこまで真剣に織り込むべきかを、やさしく整理していきます。
量子コンピュータはビットコインの「どこ」に効いてくるのか

暗号アルゴリズムが破られるとはどういうことか
量子コンピュータの話でよく出てくるのが、「現在の暗号アルゴリズムが危ない」というフレーズです。ここで言っている暗号とは、ざっくり言うと「公開鍵と秘密鍵の仕組み」のことだと考えてください。
もし量子コンピュータが本当に強力になれば、公開鍵から秘密鍵を逆算できる可能性が出てきます。そうなると、「鍵を持っている人だけが送金できる」という前提が崩れ、資産を勝手に動かされるリスクが生まれます。
ビットコインそのものが突然消えるというよりも、「鍵の強さ」が揺らぐことで、資産の安全性が変わってしまうイメージです。
アドレス再利用と長期放置がリスクを高める
もう少しだけ踏み込むと、「どんなアドレスが狙われやすいか」も変わってきます。技術的には、過去に公開鍵が露出しているアドレスほど攻撃対象になりやすいと考えられています。
シンプルに言うと、同じアドレスを長く・何度も使い回すほど、後々狙われやすくなる、という方向性です。逆に、こまめにアドレスを変えたり、そもそも量子耐性の高い方式に移行できれば、リスクは相対的に下げられます。
長期ホルダーにとって重要なのは、「どの銘柄を買うか」だけでなく、「どんなアドレスや署名方式で、どのくらいの期間置いておくか」という視点もセットで考えることです。
長期ホルダーが抱える“時間軸”特有の量子リスク

5年投資と20年投資では「置いていかれリスク」が違う
5年くらいのスパンなら、今のルールが大きく変わらない前提で考えても、そこまで不自然ではありません。ところが、10〜20年となると話が変わります。
暗号技術の標準が変わるかもしれないし、ビットコインの仕様やウォレットの常識も変わるかもしれません。そのときに怖いのは、価格変動そのものよりも、「前提が変わったのに、自分だけ昔の設定のまま」という状態です。
これは一種の「置いていかれリスク」であり、長期ホルダー特有の問題と言えます。
「今の暗号が一生持つ」前提での完全放置は危険
「今の暗号は強いから大丈夫」という言葉は、現時点ではおおむね正しいでしょう。ただし危ないのは、「だからこの先もずっと何も気にしなくていい」と解釈してしまうことです。
10〜20年のあいだに、技術側が量子耐性を高めるアップデートをしていく可能性は高いです。そのときに、自分がその変化にまったく気づかず、ウォレットや管理方法を一度も見直していないとしたら、それはやはりリスクが大きいと言わざるを得ません。
それでも長期で持ちたい理由を言葉にしておく
だからこそ、長期ホルダーにとって大事なのは、「量子が怖いからやめるかどうか」だけではありません。
そもそも、なぜ自分はビットコインを10〜20年持ちたいのか。インフレへの備えなのか、「国家の外側にある資産」としてのポジションなのか。ここを自分なりに言語化しておくことで、量子リスクに対してもブレにくい判断がしやすくなります。
長期ホールド資産に特有の技術リスクとは?
取引所に置きっぱなしと自己管理でリスクの中身が違う
まず整理しておきたいのは、「どこに置いているビットコインを長期で持つつもりなのか」です。同じ1BTCでも、置き場所によってリスクの中身がまったく違います。
取引所に置きっぱなしの場合、量子リスクの前に、破綻・ハッキング・凍結・規制といったリスクがあります。つまり、別のレイヤーでかなり大きなリスクをすでに取っているとも言えます。
一方、ハードウェアウォレットなどで自己管理している場合は、量子リスクに加えて「秘密鍵紛失」「バックアップの漏洩」といった自分のミスまで背負うことになります。自分が今、どのレイヤーでリスクを取っているのかを自覚しておくことが、量子リスクを考える前提になります。
ウォレットや鍵の方式が「古くて危ない」側に回る可能性
10〜20年のスパンで見ると、今「安全」と言われているウォレット方式が、将来は「古くて危ない」と見なされる側に回る可能性は十分にあります。
かつてはフロッピーディスクが当たり前だったのに、今では読むためのドライブすら手元にない。これとよく似たことが、暗号資産の世界でも起こりうる、というイメージです。
量子コンピュータは、この「古くなっていくスピード」を速める要因のひとつです。10〜20年放置する前提なら、途中で一度も見直さないのはさすがに危ない、という感覚を持っておくとちょうどよいでしょう。
相続・死亡リスクと量子リスクが重なるとどうなるか
長期ホルダーなら、相続の問題も避けて通れません。自分が亡くなったあと、そのビットコインはどう扱われるのか。家族や相続人は、量子耐性のアップデートやウォレット切り替えにちゃんとついてこられるのか。
もし、量子リスクが現実味を帯びてくるタイミングと、自分の高齢化・体調の変化が重なったらどうなるのか。ここを少しだけ想像しておくと、「今のうちに、最低限どこまで整理しておくべきか」のイメージがつきやすくなります。
人生全体のリスクマップの中で量子リスクをどう位置づけるか
「全リスクゼロ」を目指すと何もできなくなる
ここで一度、極端なパターンを考えてみます。
量子が怖い。ハッキングも怖い。取引所も信用できない。税制も変わるかもしれない。だから仮想通貨には一切触れない——。
これはこれで一つの選択ですが、「すべてのリスクをなくしたい」と考え始めると、最終的には何も持たない・何もしないしか残らないという状態に近づいていきます。それが本当に、人生全体を通して見たときにベストなのかどうかは、また別の問題です。
長期ホルダーに必要なのは、量子リスクをゼロか100かではなく、どのくらいの重さで受け止めるかを決める視点です。
税制・規制・CEX破綻・ハック…量子より先に現実化しやすいもの
ここ10年のクリプト市場を振り返ると、すでにいくつもの大きなリスクが現実に起きています。
- 取引所の破綻やハッキング
- ブリッジやプロトコルの大規模ハック
- 税制や規制の変更
- プロジェクト自体の消滅
これらは、量子コンピュータとは関係なく何度も起きてきました。にもかかわらず、量子だけを極端に怖がり、他のリスクをスルーするのは、優先順位として少しアンバランスです。
「量子は、すでに存在しているいくつかの大きなリスクの中の一つにすぎない」。そんな感覚で位置づけておくと、過剰な恐怖に振り回されにくくなります。
生活・仕事・健康と並べて、量子リスクの“位置”を決める
10〜20年という時間軸で見れば、人生側のリスクも無視できません。
- 仕事がどうなるか(転職・昇進・失業)
- 家族構成がどう変わるか(結婚・出産・離婚)
- 自分や家族の健康状態がどうなるか
多くの場合、これらの方が量子リスクより先に現実化します。だからこそ、人生全体のリスクマップをざっくり描いたうえで、その中に量子を1マスとして置くくらいの感覚がちょうどよいでしょう。
「量子だけが特別に怖い」のではなく、「いくつかある大きなリスクの一つ」として並べて見ることで、冷静なバランス感覚が保ちやすくなります。
「量子が怖いから全部やめる」は本音か?を確認する
もっともらしい“言い訳”として使っていないか
最後に少しだけ踏み込んだ話をします。
「量子コンピュータが怖いから、ビットコインは全部やめる」という言い方は、とてももっともらしく聞こえます。ただ、その理由が本心の100%なのかどうかは一度立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。
じつは単に含み損がつらいだけかもしれないし、クリプトそのものに飽きているのかもしれません。それを「量子が危ないから」という形でコーティングしてしまうと、自分が本当に手放したいもの・守りたいものが見えにくくなる危険があります。
感情と理由を分けて書き出してみる
おすすめなのは、一度感情と理由を分けて書き出してみることです。
- 正直、今の含み損を見ているのがしんどい
- 他の投資や自己投資にお金を回したい
- 量子リスクのニュースを見て、不安が増幅している
こうやって整理したうえで、「それでもなお量子リスクを理由に手放したいのか」を自分に問い直すと、決断の軸が少しクリアになるはずです。
量子リスクは“やめる理由”でも“夢を見る口実”でもない
量子コンピュータはたしかに大きなテーマですが、それだけを見て「ビットコインは終わりだ」と決めつけるのも、逆に「だから今のうちに全ツッパだ」と盛り上がるのも、どちらも少し極端です。
長期ホルダーにとって大切なのは、量子リスクをゼロか100かで捉えることではなく、人生全体の中で「このくらいの重さのリスクとして扱う」と決めることです。そのうえで、ビットコインとの距離感をどうとるか——。
税制やポートフォリオ全体とのバランスについては、別記事の「ビットコイン長期投資とNISA・円建て資産のバランスの考え方」でも詳しく解説しています。量子だけでなく、資産全体の設計も含めて考えたい方は、あわせて読んでみてください。